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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第4章 花籠の中のつぼみ
放課後のチャイムが鳴ると、教室のざわめきが一気にほどけていった。
宿題の確認をする子、廊下に飛び出す子、机を寄せて遊びの相談をする子。
こよみは手際よく教科書をランドセルにしまい、机の上をきれいに拭く。

「こよみちゃん、今日は帰るの早い?」
斜め前の古賀が声をかけてきた。

「うん、ちょっとね。家のこともあるし」

笑顔らしい形だけを口元につくり、こよみは頷く。
古賀はそれ以上聞かず、にっこりと笑った。

「じゃあ途中まで一緒に帰ろ」

二人で校門を出ると、春の風は少し湿り気を帯びていて、遠くでツバメの鳴く声がした。
古賀は道すがら、家庭科の授業で作るエプロンの話をしてくれた。刺繍の柄をどんな色にしようか迷っているらしい。

「こよみちゃんはやっぱり花の模様かな?」

「……うん、かな」

話題は軽やかでも、こよみの歩みは少し早い。
古賀がそれに気づいたようで、首をかしげる。

「急いでるんだね」

商店街に差しかかると、着物の反物や小物を並べた月島呉服店の前で、店の従業員である佐藤・高橋・鈴木が立ち話をしていた。
夕方の斜陽に照らされた三人の影が、石畳に長く伸びている。こよみは反射的に視線を下げ、古賀に小声で言った。

「ここで」

古賀は軽く手を振り、「またね」と返して別れていった。

「お、こよみちゃん。毎晩遅くまでご苦労さま」
こよみの姿に気づいた佐藤が、笑みを含んだ声でそう言った。

背中の奥を爪でなぞられたような感覚が走る。
――考えたくないのに、心臓がどくりと鳴った。

高橋が肩をすくめる。
「この前のイベント、盛り上がったよな」

「まあな」
鈴木は静かに笑う。

三人の視線が、一瞬だけこちらに揃った気がして、こよみは「ただいま」とだけ返して通り過ぎた。耳の奥で佐藤の笑い声が尾を引く。

店の横手へ回り、勝手口の前に立つ。
鉄のドアノブは昼間の陽でじんわりと温かい。
手をかける前に一度だけ振り返ると、三人の立ち姿がまだ視界の端に残っていた。
話の中身はもう聞こえないが、視線だけが背中に貼りついているような気がする。

こよみは小さく息を吐き、ドアノブを回した。
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