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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第4章 花籠の中のつぼみ
店の引き戸が開く音がして、外の夕方の空気がふわりと入り込んだ。足音が板の間を渡り、間もなく父・孝幸が姿を現す。

こよみが食卓に並べた夕餉を、孝幸は一瞥する。
焼き鮭、ほうれん草のおひたし、なめこと豆腐の味噌汁。湯気の立つ器の列を見渡し、眉がわずかに寄った。

「もう少し早く用意できんのか。それに、ほうれん草なんて旬はもう終わりだぞ。春のうちに食っとくもんだ」
「……ごめんなさい」
こよみは箸をそっと置き、頭を下げた。

孝幸は鮭の皮を箸で剥ぎながら、ぽつりと口を開いた。
「今日も佐藤は口ばっかりで、ろくに手が動かん。ああいうやつは表ばかり飾って、裏は手抜きだ」
こよみは小さく相槌を打つ。

「高橋は相変わらず調子だけはいいが、余計な話を客にまで聞かせやがって。あれで売り上げが落ちたら責任取れるのか、って話だ」
鮭をほぐす音が、妙に耳に残る。
こよみは視線を落とし、味噌汁を一口すする。

「鈴木は……真面目なのはいいが、肝心なところで引っ込む。信頼はあるが、営業に出ても数字が上がらん。やる気があるのか、ないのか」
愚痴の矛先が次々と移っていく。机越しの影が揺れ、声の熱だけが増していく。

こよみは、聞いているふりをしながら、頭の奥で別のことを考えていた。
湯気の向こうに母の姿を思い浮かべそうになり、慌てて意識を戻す。
――この流れの先に、何が待っているのかを、もう知っているからだ。

夕食は淡々と進み、食器が触れ合う小さな音だけが部屋に響く。
外ではもう完全に商店街が眠りにつき、シャッターの並ぶ通りを風が抜けていく。

孝幸は湯呑みに手を伸ばし、熱い茶をひと口すする。
湯気の向こうから、低く抑えた声がこよみに向けられた。

「……宿題はもう済んでいるのか」
「……はい」

「全て片付けて、風呂が終わったら俺の部屋に来い」

茶を置く音が、やけに大きく響いた。
その音とともに、こよみの胸の奥で、夕方の安堵は完全に消え失せていた。
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