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いまやめないで このままでいて
第2章 第2話 わたしをひとりにさせないで、ひとりでさせないで

「ほんとうにごめんね」 とだけ言った文弥に抱きしめられた美咲は何も言えずにただ涙だけが流れて彼にしがみついていた。
今思えば些細なことで別れ話にまでなったことが、まるで嘘のようだった。
もつれあってベッドへ倒れ込んでからふたりは初めて少し冷静にお互いを見つめ合った。
「ほんとに悲しかったの…」
美咲は文哉の胸に顔をうずめて小さな声で訴えた。
「ごめんね… ほんとにごめん…」
両手で美咲の頭を抱え込みながら、文哉が応える。
「く、苦しい…」
あえぎながら、美咲が少し笑って顔を上げると、その口を文哉がふさいだ。
「ずっと寂しかった…」
美咲はそう言うと、思わずさっきの隣戸から聞こえてくる声の話をした。
「ほんとに?」
そういう話も聞いたことあるけど、と言いながら文哉は壁に耳を当てた。
確かめるように眼を見開きながらしばらくそうしていた彼は、やがて何かに気づいて美咲の耳を壁に押しつけた。
「あれさ、アダルトビデオだよ」
彼は小さな声でそう言って笑った。
「美咲… あれ聞きながらひとりでしちゃったの?」
両腕で肩を抱かれながら、耳元で文哉が美咲にささやくように聞いた。
「言わないで… ふみやを思い出して寂しかったの… ふみやが欲しかったの…」
小さくこくんとうなずき、文哉の背中を回した手で叩きながら、甘える美咲の眼からまた涙があふれた。
「ぼくがいっぱい愛してあげるから…」

