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いまやめないで このままでいて
第8章  第8話  知らなかったこの震える悦びを

「ほんとうにまたお会いできるんでしょうか…」

「奈津子さん困りませんか?」

 仰向けになっている胸に頭を載せて乳首をなぞるように弄んでいる奈津子に問われて栗原は訊ねた。

「わたし… お会いできないほうが困ります…」

 彼は黙ってうなずきながら彼女の髪の乱れた頭を両手で包むように抱くと、胸に温かいものがこぼれるのがわかった。

「こんなにいっぱい… 恥ずかしい…」

「ううん、素敵でした。可愛かった」

「おばさんだし恥ずかしい…」

 数えきれないくらい絶頂の悦びに叫び、声が枯れて小さな咳払いをした奈津子の頭を動かすと、栗原は枕元のペットボトルの水を取り、口移しで彼女に含ませる。

 そんなことをされたことは初めてだったし、これほど丁寧に優しく愛され感じさせてもらったことも彼女の躰の記憶にはなかった。

 瞼を閉じている奈津子の口からこぼれた水が頬を伝い落ち、涙に混じってシーツの乱れに染みた。



 栗原の新任地はこれまでのような近い距離ではないが、電車で2時間ほどの道のりだからさほどの無理はなかった。

 むしろ、近所で知った人に会う危険が少なくて良いと思えるのだった。

「離したくない…」

「離しませんよ…」

 栗原はそう言ってくれるが、いつまでも続く関係でないことは口には出さないまでもお互いに百も承知のことである。

 それでも奈津子は、束の間でも構わないから今この幸せな時間を少しでも長く手に留めておきたかった。

 手をつないで歩きたかったが、それをこらえ少しだけ離れて観光客で賑わう雑踏の中、信号待ちをしながら栗原が口を開いた。

「今日はここでお別れしましょう」

「はい」

 彼の顔を見ずに奈津子は応える。

 明日から異動前休暇に入る栗原ともう店で会うことはない。

「すぐまたLINEしますから…」

「お待ちしています…」

 奈津子がそう応えて栗原の顔を見ようとした時、信号が変わって一斉に人が動いた。

 ラッシュのような横断歩道の上でふたりの間は離れていく。

(きっと離れないで… きっと抱いてください…)

 人の流れに押されながら一瞬振り返って前で手を上げた栗原の後姿を見送った奈津子の身体は、そのまま地下鉄へ続く階段へと運ばれていった。


  -完-

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