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いまやめないで このままでいて
第3章 第3話 あなた色を決して忘れない

クリスマス前の横浜でのきっかけからは、平日の退勤後にホテルへ行くことがあったが、引っ越してからは、金曜日の夜にときどき潤一が唯花の部屋を訪ねるようになっていた。
ふたりともホテルよりアパートの部屋のほうがくつろげる気がしていたのだが、土曜日に逢えることがあっても誰が訪ねてくるかわからない週末の日中は避けていたのである。
金曜日なら翌日が休みということもあって、緊張の糸が少しだけ緩んだふたりは潤一の終電近くまでまったりとしたす数時間を過ごすのである。
先に早く帰ることができる日に唯花は急いで食材の買い物をしてから軽くシャワーを浴びて、簡単な夕飯を用意しながら純一がやってくるのを待つのがことのほか幸せを感じる時間だった。
部屋に着くとすぐにシャワーを使いたがる潤一がユニットバスにいる間にテーブルセットをして冷えた缶ビールを前に待っていると、この仮初めの幸せが長く続くものではないとわかっていながら、それはすぐに封印した。
食事のあいだも、現実を離れたかったからテレビをつけることはせずにいる。
缶のままのビールは悲しいから、ネットでかなりの時間をかけて探したトールグラスに必ず移し替える。
泡があふれてきゃあきゃあ言い合っているわずかな時間も好きだったし、お揃いで買い求めたテーブルウェアがいつかは処分することになるのだろうことも、わかっていながらその時は考える気すらしなかった。
狭い部屋だったので食卓は座卓にしていたから、ふたりで食事するときはベッドにもたれながら並んで摂るかたちになったが、それも彼女の望んだことである。
だから、食事の途中に抱き寄せられて求められて困ることもあった。
通気のためのスノコの上にマットレスと布団を置いただけのローベッドにしていたので、そのまま後ろに倒されるとあとは自然の流れになすままになる。
座卓に脚があたってグラスからビールがこぼれ、一瞬だけそのほうを振り返るが潤一は唯花の口をふさいだまま愛撫の手をゆるめない。
唯花が小さく喘いだ。

