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いまやめないで このままでいて
第3章  第3話  あなた色を決して忘れない

 翌週には名古屋へ戻ることになった夏の終わりの金曜日、横浜の山下公園のそばにあるホテルの部屋で唯花は潤一の腕に抱かれていた。

 少し前にすべてを打ち明けられた潤一は簡単には納得してくれなかったが、誰にも言うことができない想い出をこれ以上作り続けることはできないと唯花は心に決めて、最後の一夜をあの日の想い出の横浜で過ごすことを潤一に懇願したのだった。

 カーテンを開けたまま、港の灯りを見下ろしながら、ふたりは激しく求め合った。

 これでもかこれでもかと言わんばかりに、潤一は唯花への愛撫を繰り返し、むさぼるように脚のつま先から首筋から、恥ずかしい場所まで体のあらゆるところへ吸い付くようなキスをしてくれ、丹念に舌先を転がしてくれた。

 搔きむしりたくなるほどの耐えられない甘美なくすぐったさに唯花は絶え間なく襲われ続け、声が枯れた。

 ふたりとも口には出さなかったがこれが最後とわかり合った中で、1秒たりとも無駄にしたくないという、すべてを吸いつくさんばかりの、まるで2色の絵の具を混ぜ合わせるようなとろけ合いであった。

 もう一つの色と混じる前の忘れない色を残しておこうと…

 何度も何度も「ありがとう」をお互いにささやきながら、むさぼり狂ったように唯花は数えきれないほど絶頂に震えたあと、最後に潤一が痙攣のように何度も放った温かいほとばしりを絶叫の中で受け止めた。


 重なり合ってひとつの色になったまま動けなくなったふたりを、欠け始めた白く輝く月が遠くから見下ろしていた。

   ー完了-
 
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