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いまやめないで このままでいて
第5章 第5話 過ぎた日の思い出を彼にあずけて

指で掬われた泉から溢れる蜜が開いた花弁に隠れていためしべに塗り込まれるように与えられ、その指先は小刻みに小さな円を繰り返し描くと、一瞬固く閉じかけた佳緒里の両脚が、うながされるように少しずつ開いていき、指が花弁を分けて蜜壺の中へ滑り込んでいく。
濡れた指が蜜壺の中とめしべとをゆっくり行き来する。
最後に夫の指で愛されたのはいつのことだったか思い出せないほどの長い間溜められていたかのような蜜が泉からとめどなく溢れ、谷間を滴り落ちてシーツに浸み込んだ。
蜜壺の中の1本だった指が2本に増え、めしべは親指の腹でその先端をそっと撫で続けられていた。
「こわして… こわしてください…」
佳緒里がせがむように坂田の背を締め付けながら再び小さく叫んだ。
「めちゃめちゃにして…」
「かおりさん…」
「あなた…」
あなた、と呼ばれた彼は一瞬戸惑った。
「あなた… あなた… めちゃめちゃにして…」
亡き夫を思い出しているのかと思いながらも彼は佳緒里を全身で愛した。
掌でつつんだ胸に唇を合わせ、舌先でついばみ、花園の泉の蜜の中を掻き出すように。
「ああああ… こわれる… こわれる…」
「かおりさん…」
「あなた… あなた… あ、あぁ… わたし、もう… あああああぁ…」
幼児のように深く折り曲げた膝が大きく開き、背を丸め渾身の力を込めて坂田にしがみついた佳緒里は、初めて「いくっ!」と声を上げて、その日何度目かの絶頂に激しく達した。
(この街での思い出は彼に預けて行こう…)
狂ったように果てた躰を坂田に抱きしめられたまま、そう思いながら佳緒里の意識は窓から差す月明かりの中を舞っていた。
ー完ー

