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いまやめないで このままでいて
第8章  第8話  知らなかったこの震える悦びを
 
 少し濡れた髪に軽くドライヤーをあて終え、ケトルでお湯を沸かしながらドリップコーヒーを淹れ始めた奈津子のそばに、バスルームから下着姿のままで出てきた栗原がそっと寄り添った。

「お砂糖入れます?」

 振り向いて訊ねた奈津子のバスローブの腰に、ブラックでと応えた彼の手がさりげなく回される。
 
 お湯を得てふくらんだドリップパックをカップから取り出してトレーに移し終えた奈津子は、うしろから栗原に抱きすくめられた。

「コーヒー…」

「あとで…」

 覗き込むようにして彼に唇をふさがれた奈津子の垂れ下がったままだった両腕が栗原の首に巻きつく。

 バスローブの中へ伸びた手で、ふたつの胸のふくらみが掌にくるまれた彼女はついさっき感じたのとは違う電気が背中を走った。

(わたし… こんなに感じるなんて…)

 平衡感覚を失って身体を彼にあずけた奈津子は、そのままよろめいてもつれるように後ろのベッドへ重なりながら倒れ込んでいた。



 開かれたバスローブの上の白い肌の上を栗原の指と舌先が絵を描く細い筆のように這い、くすぐられるようなむず痒い快感が立て続けに奈津子を襲った。

 前身頃にあしらわれたカトレアのレースから透けて見えるうっすらとした叢に彼の鼻先が寄せられると、そのままショーツがゆっくりと下ろされていく。

 花びらをかき分けた舌先でめしべを転がされ、唇で吸われると、奈津子の手は彼の頭を掻きむしるようにつかんでいた。

 そして、指先が花びらを開いて蜜の溢れる泉の中へ忍び込んでくると、閉じられていた奈津子の脚はたまらず開いて腿は鳥肌が立った、

 堪えられない恥ずかしさに震えながら、彼女は襲い来る快感に抗えなかった。

「あああっ… あっ… あっ… あああああ…」

 初めて知った躰の芯を貫かれるような快感で彼女は何もことばを発することができなかった。

「あああああ… いい… わたし… もう… ああああ…」

「なつこさん…」

 唇を離してひとこと栗原がささやいた。

「いっ… いっ… いっちゃう… いっちゃう…」

「なつこさん! きて!」

「ああっ… あっ… いっ いくいくいく… いっ… いくっっ!!」

 長い間封印されていた奈津子の蜜壺の蓋が一気に弾け飛んで、溢れ出た蜜に栗原の指が濡れて光る中、冷めたコーヒーの香りが部屋を満たしていた。

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