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いまやめないで このままでいて
第2章  第2話  わたしをひとりにさせないで、ひとりでさせないで

「もうこんな時間になっちゃった…」

 その日のシフトを終えてアパートの部屋に帰ると、美咲はそのまままっすぐにベッドへ疲れた身体を投げた。
 
 アパートとはいっても大手デベロッパー管理の瀟洒な2階建ての建物で、設備はマンション並みだし、一人暮らしには快適だった。

(あの人たち、あのあとホテルにでも行ったんだろうな…)

 仰向けに寝転がって染みひとつない真っ白な天井を見つめながら、彼女は今日の最後の客のことを思い出していた。


 ブライダルハウスに勤めている彼女が接客するカップルは実に多様であったし、従業員たちの表の会話と裏とのギャップには驚かされる毎日である。

 慇懃で丁寧な対応をしていた担当者が、客が帰るやいなや同僚と〝あれが相手じゃ俺、勃たねえよ〟などと美咲がそばにいることも気にせずに笑い合っていることも日常茶飯事だった。

 そうしたことにも慣れてしまっていたが、今日最後に接客したカップルのラブラブの様子は、2週間前に3年付き合った文哉と別れたばかりの彼女にとってその辛さは、喉と胸を焼かれるように堪えがたいものだった。


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