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初恋を奪った皇太子は、私を逃がさない
第2章 禁断の庭園
戸惑いの声を上げた私の手を、殿下はまたも当然のように取る。

そして一言も言わずに、すっと温室の中へと導かれていく。

「待っ──」

そう言いかけた言葉は、扉が静かに閉じられた音にかき消された。

中はほんのりと暖かく、かすかな花の香りが満ちていた。

月光がガラス越しに射し込み、温室内をぼんやりと照らしている。

「ほら、ここには庭園に咲いていない花が咲いているよ」

そう言って殿下が示した先にあったのは、鮮やかな赤──
否、深紅に近い、濃く艶やかな薔薇だった。

「……綺麗……」

その美しさに思わず息を呑む。

花びら一枚一枚がまるで絹のように滑らかで、ほんのりと湿った空気の中に甘く香っていた。

見とれていた、その時だった。

「……っ!」
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