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初恋を奪った皇太子は、私を逃がさない
第1章 運命の舞踏会
彼女たちはそう言って、笑いあっていたけれど、私は胸の奥がじんわりと冷えていくのを感じた。

──そうか。
皇太子とは、そういうものなのか。

私は社交界にデビューしたばかりで、そういった事情にはまだ疎い。

けれど、あの美しく孤高な存在に、恋心のようなものを抱いてはいけないのだと、今の会話で理解した。

きっと彼は、誰かの“本物”にはならない。

誰かと添い遂げるとしても、それは政略の果てに決められた誰か。

気まぐれに微笑んで、手を取って、踊って、夜には……そういうこと。

それが“女嫌い”という仮面の裏にある、彼の本性なのかもしれない。

(だから……私は、関係ない)

そう思って胸を押さえたときだった。

まるで風が吹いたかのように、周囲の空気が変わった。
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