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初恋を奪った皇太子は、私を逃がさない
第1章 運命の舞踏会
(……私が?)

私の心が問いかける。

皇太子殿下の相手に?

確かに私は公爵令嬢ではあるけれど、社交界に出たばかりの、ただの新参者。

彼のような高位の方が、わざわざ私を──?

「し、失礼を……っ」

戸惑いから思わず後退ろうとした私の手を、彼はすっと掴んだ。

「君がいいんだ」

静かな声。
けれど、有無を言わせない力がその言葉にあった。

拒むことなんてできなかった。

拒んではいけないと思ってしまった。

私は、手を取られたまま、一歩を踏み出す。

──その時、心の奥で微かに何かが揺れた。

懐かしいような、不思議な既視感。

(……どうして、あなたの目を見ていると、胸が苦しくなるの?)

まだこの時の私は知らなかった。

この一歩が、運命そのものだったということを──
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