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初恋を奪った皇太子は、私を逃がさない
第1章 運命の舞踏会
でも──
皇太子殿下の相手を務めたとしても、それは遊びにされるだけかもしれない。

しかも、そんな目立つことをしたら、きっと他の貴族の方々には「皇太子の相手だった令嬢」としか思われなくなる。

この先、誰にもダンスに誘ってもらえないかもしれない。

(どうしよう……)

私は迷った。足が動かない。息も苦しい。

けれど──その私の迷いを、彼がさらりと断ち切った。

「……あの……」

声をかけようとしたその瞬間には、彼の手が私の手を取っていた。

温かくて、しっかりしていて、でもどこか無理のない優しさに満ちたその手。

気づけば、私はホールの中央に立たされていた。

(うそ……こんな、目立つ場所……)

目が回りそうなほどの視線が突き刺さる。
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