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初恋を奪った皇太子は、私を逃がさない
第1章 運命の舞踏会
目が、合う。

目を逸らすタイミングが、ない。

まるで、視線だけで会話しているような──

何かを確かめ合っているような、そんな錯覚。

時間が止まったみたいに、ただ見つめ合いながら、ワルツの旋律に身を委ねる。

私の鼓動の音と、彼の手の温もりと、呼吸の気配だけが、すべてだった。

(どうして……こんなにも、心が揺れるの?)

その理由に、気づくには──まだ少しだけ、時間が必要だった。

ダンスが終わると、私は深く礼をした。

「ありがとうございました、殿下」

言葉も足りず、礼も不恰好になってしまった気がして、胸がどきどきしていた。

そんな私に、アレクシス殿下はふと微笑んだ。

「上手だったよ」

そのひとことに、心が跳ねた。
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