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僕の母さん
第11章 それぞれの姫始め

男女4人の大人がメインテーブルに着席して
達郎と彩也香は弾かれるように簡易テーブルに座らされた。

「どうして家族の僕が末席なんだよ」と小声で文句を言うと、
すかさず彩也香が「仕方ないわよ、大人同士お酒を飲むんだから未成年は除け者よ」と優等生のような返答をこれまた小声で達郎に囁いた。

女二人は、それぞれのパートナーに「これを食べて」とか「お口に合うかしら?」などとイチャイチャし始める。
こうも露骨にイチャイチャされると彩也香の女の勘が発動する。

「ねえ…もしかして真壁さんって…ママと付き合っているの?」

唐突にそんなことを言うものだから
佐智子は危うく呑んでいたビールを吹き出しそうになった。

「そうだよ、僕が佐智子さん、つまり君のママの恋人さ」

ふぅ~ん…
ダメとも、いいわよとも言わずに、彩也香は値踏みするように真壁の顔を繁々と見つめた。

「じゃあ、辰巳さんは真弓おばさまの彼氏?」

突然に話題を振られたが、いよいよ、本当の事を話すべきかと辰巳は居ずまいを正した。

「彩也香ちゃんだっけ?
そう、君の言うように僕は達郎くんのお母さんである真弓さんと真剣な交際をさせていただいてます」

だから、達郎くん。よろしくね
そう言って右手を達郎に向かって差し出して握手を求めたが、
達郎はそれを無視して「僕と彩也香ちゃん、初詣に行く約束をしていたから」とスッと席を立った。

「行こう、彩也香ちゃん」

そう言うと、おせちに手を伸ばそうとする彩也香の手をとって無理やり席から立ち上がらせた。

「えっ?初詣なら、この後みんなで行く予定だけど…」

玄関で靴を履く達郎を慌てて真弓が制止しにきた。

「大人は大人同士、仲良くやればいいじゃん!
僕たち子供は子供同士でよろしくやるからさ」

「あっ!待って!!」

真弓の制止を振り切って、達郎は彩也香を連れて部屋を飛び出した。

あんまり遅くならないでね~

追いかけてこようともせず、真弓は母親ぶって達郎に注意を促した。
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