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僕の母さん
第12章 破談
派手でもなく、かといって地味ではないお気に入りの訪問着を来て真弓は彼氏である辰巳と駅で待ち合わせをしていた。
いよいよ、彼と結婚に向けて本格的に始動することにしたのだ。
母親である真弓に彼氏が出来たことについては
まだ、息子の達郎に報告していない。
彼に納得してもらうのはもちろんだが、
まず、第一関門として、彼氏のご両親に結婚を許してもらう必要があった。
約束の時間よりもかなり早く駅に着いてしまった。
時間調整するという余裕が真弓にはなかった。
出来ることなら早く彼と落ち合って、辰己家を訪問したいという気持ちが急(せ)いていた。
ほどなくして、彼の車が駅のロータリーにやって来た。
ここよとばかりに真弓は力一杯に手を振る。
「やあ、お待たせ…
ずいぶんと早くから待っていたんじゃない?」
車に乗り込んで真弓の手を握って、
その手の冷たさで、寒空の下で真弓がかなり待っていたことを彼は悟った。
「いえ、そうでもないんですけど…
なんだか、あなたのご両親にお会いすると思うとドキドキして何も手につかないから早めに家を出てしまったわ」
「そんなに緊張することはないさ、
両親は、いつも口癖のように早く結婚しろとけしかけるんだから、君を妻にしたいと報告したらもろ手をあげて賛成してくれるさ」
「そうかしら…私、バツイチだし、あなたよりも15歳も歳上だし、おまけに子供だっているのよ」
「愛し合っている二人に、そんなものは大した障害じゃないさ」
彼が大会社の子息だと言うのは聞いていたし、
手土産は失礼のないように高級和菓子を選んだけれど、
気に入ってもらえるかしら…
いえ、そんな手土産よりも、真弓自身を気に入ってもらえるかどうか…
そうこうするうちに、車は彼の実家に到着した。
その大豪邸を目にして、私は身の丈に合わない恋愛をしてしまったのではないかと怖じ気づいた。

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