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僕の母さん
第13章 彼女の母親、佐智子の誘惑

この頃、娘の紗耶香が暗い。
それもそのはずで、紗耶香自身としては以前と比べて猛勉強しているのに、成績が思うように伸びない。

担任の先生との三者懇談で「紗耶香さんの成績は伸びてます。ただ、中学二年生になると生徒たちは皆やる気を出し始めて、全体的にレベルアップするものですから、成績がアップしても全体のレベルが上がってしまうので成績順位としは横ばいに感じてしまうものなんです」と言うことだった。

「先生、私、T大付属高校に行きたいんです!
このままだと無理ですか?」

それまで口をつぐんでいた娘の紗耶香が、
ようやく口を開いたと思ったらとんでもないことを言い出した。

「ん~…そこは寝る時間を割いて頑張っても苦しいかな~
でも、今の成績なら、けっこう高いレベルの高校にチャレンジ出来ると思うよ」

そんな言葉など紗耶香にはどうでもいいことだった。
T大付属高校でなければ達郎くんと一緒に高校生活を過ごせない。
それは紗耶香にとって最大の屈辱だった。

今の紗耶香の成績では、どう逆立ちしても志望校には入学できないし、チャレンジすることさえ無謀だった。
紗耶香の願いは彼氏の達郎と同じ高校に通うこと…
ならば、紗耶香のレベルまで達郎の成績を落とせばいいではないかと母親の佐智子は安直に考えた。

ある日、勉強の息抜きを兼ねて、達郎が紗耶香の家に遊びに来た。
「夕飯、一緒に食べて帰るでしょ?」
達郎に確認すると「ええ、ぜひお願いします。家に帰っても母さんは出掛けてしまって、今夜はコンビニ弁当でも買おうかと覚悟していたんです」

「まあ!真弓があなたをほったらかしにしてお出かけなんて珍しいわね」

「いえ、最近はちょくちょく家を留守にするんです…
もしかしたら…」

「もしかしたら?」

「母さん、僕の学費を積み立てるためにヨガのインストラクター以外の仕事を始めたんじゃないかと…」

「まあ!それが本当なら一大事よ!
うちのジムは副業を禁止しているから」

いいわ、タイミングを見計らって私から真弓に釘を刺しておくから。
そう言いながらも、佐智子は『真弓が副業を?まさかね…』と達郎の言葉を信じきれなかった。

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