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僕の母さん
第13章 彼女の母親、佐智子の誘惑

夕食を済ませると、かなりの時刻となっていた。

「遅くなっちゃったわね
達郎くん、送っていくわ」

「そんな、いいですよ。歩いて帰りますから」

「ダメダメ、あなたにもしものことが真弓に申し訳ないもの
それに、真弓に会っていろいろ問いただしたいこともあるし」

それなら私もついてゆくと言い出した紗耶香を
佐智子はピシャリと牽制した。

「お母さんね、達郎くんのお母さんと話し込んで帰りが遅くなるかもしれないし、今夜は我慢しなさい。
それに、宿題もまだ済ませてないんでしょ?」

「そうだよ紗耶香ちゃん、予習復習は絶対に必要だよ。
頑張れよ、僕と一緒の高校に行くんだろ?」

達郎にそう言われたら言い返す言葉もなかった。

「わかったわ…私、頑張るから。
絶対に達郎くんと同じ高校に合格してみせるわ」

恋の力って偉大だわと佐智子は思った。
今まで散々勉強しろと言っても教科書を開くどころかスマホを片手に拗ねていたのに、達郎くんの一言で目の色を変えて勉強しだすんだから…

「さ、達郎くん。行きましょ」

「はい。紗耶香ちゃん、また明日学校でね」

「うん、またLINEするね」

そうして佐智子は車のキーを手にすると、
達郎を連れて外の駐車場へと急いだ。

「おばさん、本当に迷惑じゃない?」

「子供はそんなことを気にする必要はないのよ
さあ、乗って…」

二人の乗った車は、達郎の自宅マンションを目指して出発したが「ねえ、ちょっとだけドライブしましょうか?」と佐智子が言い出した。
ドライブしようか?と言ったのに、佐智子は誰もいない夜の公園の駐車場で車を停めた。

「ね、達郎くん…
おばさん、あなたにお願いがあるの」

「何ですか?」

「紗耶香の事なんだけど…出来れば塾とか家庭教師をつけてあげたいんだけど、そんな余裕はうちにはないのよ」

「はあ…」

「それでね…相談なんだけど…紗耶香の家庭教師を引き受けてくれない?
ううん、毎日じゃなくて構わないの
週に三日ほど…ダメかな?」

なんとしてでも達郎の成績を落としたいと佐智子はかねてから考えていた計画を実行することにした。

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