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僕の母さん
第16章 大団円

達郎が中学を卒業し、高校に入学した。

「母さん、行ってきます」

高校で流行っている着こなしなのかもしれないけれど、
やけにラフな着くずした制服に身を包んだ達郎が靴のかかとを踏み潰しながら玄関を勢いよく飛び出す。

「忘れ物はないわよね?」

達郎の背中に向かって声をかけると、
一度は外に飛び出した達郎が「いけねえ!」と再びドアを開けて戻ってきた。

「なに?忘れ物?しっかりしなさいよね」

エプロンを外しながら息子の達郎を叱る。
てっきり忘れ物を取りに自分の部屋へ向かうのかと思いきや、
達郎は真弓をハグした。

「大事なことを忘れるとこだった」

そう言って達郎は母の真弓にキスをした。

「もう!この子ったら」

言葉は叱りつけているが、真弓の表情はとても嬉しそうだった。

「じゃあ、真弓、行ってくるからね
よその男に言い寄られてもついていかないでね」

家の中では母の事を「真弓」と呼び捨てにしていた。
ドアを開けてひとたび外に出ると「じゃ、母さん、行ってきます」と見事にオンとオフを切り替えていた。

セックスに明け暮れていた達郎は、真弓の願いもむなしく公立高校に進学した。
公立ではあるが、ハイレベルな高校で勉強を疎かにするとすぐにクラスメートから引き離されるので、高校受験の時のように予習復習は欠かせなかった。

当然、私学のような高額な学費を捻出する必要もなくなった真弓は、辰巳健太との愛人契約を打ち切って欲しいと願い出た。
「これまでの恩を仇で返すのか?」と健太に罵倒され、ズルズルと愛人関係を継続することもなく、辰巳健太は女ならばいくらでも金の力で愛人を作る事が出来るのだよと、意図もあっさりと愛人契約を解消してくれた。

真弓と達郎の二人っきりの生活がまた始まっていた。

紗耶香と言えば、母である佐智子の裏工作もむなしく、紗耶香のレベルに見合った公立高校に進学した。
あれほどまでに達郎と同じ高校に通いたいと駄々をこねた紗耶香であったが、以外にも今の学校は水が合うのか、こちらも上機嫌で通学する日々を送っていた。
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