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久美子
第5章 再会と別れ
俺は医師達の邪魔にならぬ様壁際に立ち、様子を見ていた。
医師が脈や瞳孔検査等をしていて、

「10時26分・・御臨終です・・・」

久美子の体から点滴が抜かれ、機器も外されていた。
俺は冷たくなっていく久美子の手と頬に触りながら泣いた。

その後、後処理をするからと玄関の待合室で待っていると、事務所の人が、

「あの方には身寄りが無く全てご自身のお金をこちらで管理させていただきました。最期の葬儀、火葬もお願いされておりました。彼女の意思を尊重してその様にさせていただきますがよろしいでしょうか?」

「はい、私は身内ではありませんし、久美子が、いや彼女がそう言うならその様して頂けますか?」

俺は会社にもう2、3日休む事を伝えて、久美子の葬儀に付き合うことにした。
荼毘にされた遺骨は無縁仏の合葬墓があるこのホスピスに納められた。

「植草さん、ちょっとお話してよろしいですか?」
「はい、何か?」
「これをお渡ししたくて。・・久美子様の荷物を片付けておりましたら貴方様宛の手紙がありました。受け取って頂けますか?」


開いて読んでみた。



「秀樹さんへ

これを読む時があるかわからないのでけど、もし読む事があればと思って書きます。

秀樹さん愛してる。

口に出して言わなかったよね? 二人が体を重ねても言わなかった。
秀樹さんが

『一緒に暮らそう』

って言ってくれて、直ぐに追いかけて行きたいと思った。 

でもね、もう遅かったの。 もう手遅れだった。 私の命のタイマー切れは直ぐそこまで来てたから、あなたについて行くとは言えなかったの。

とっても嬉しいって思いました。

もしこんな体じゃないなら全部捨てて一緒になりたかった。

もう叶えられないなぁ、

秀樹さんにもう一度会えたら、愛してるって言いたいなぁ
                     久美子    」

俺は人目もはばからずに号泣していた。





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