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エンドレス・サマー
第1章 エンドレス・サマー
「潤兄、今日帰るの」

平静を装って尋ねれば、潤貴はすでに荷物をまとめたボストンバッグを足元に置いていた。

「おふくろが戻って来いって。学生最後の夏休みだからって、俺と旅行に行きたがってて」

照れたような呆れたような顔で笑うと、潤貴はバッグを肩にかけた。

庭に駐車した車まで潤貴を見送りに出たところで、お母さんが立ち止まる。

「そうだ潤貴、洋子にトウモロコシ持ってってよ。今取ってくるから」

と声を上げて引き返す。そう言えば玄関に、ホテルの特設会場で売れ残ったいただきもののトウモロコシが山積みになってた。

不意に潤貴と二人になって、沈黙が流れた。

昨日何度も抱き合った余韻がまだ肌に残っていて、それとは裏腹に朝日を浴びた潤貴の顔があまりに爽やかで戸惑う。

「亜澄、来年東京の大学においで。俺、待ってるから」

潤貴が私の頭を撫でた。

大きな手のひらの重みで、潤貴はやっぱり大人なんだと思い知る。

都心の大学に通う、東京育ちの男の子。見た目はいいしスポーツもできる。

洗練された年上の男は、田舎育ちの私に、蓮司がくれないものをたくさんくれた。

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