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僕の愛する未亡人
第2章 はじめての社外業務①

隣の席の佳織があまりに気になりすぎる。
だから、室内に備え付けの会議室に、パソコンを持ち込んでいた。
この部屋は、会議がなければ自由に使ってよく、四つの長机で四角形が構成された角を陣取っていた。
入口を入って右手には移動式のホワイトボードが壁に沿って置いてあるくらいで、荷物などもあまり置かれていない。
ワイヤレスイヤフォンを耳につけ、外界の音を遮断しながら、仕事に集中しようとする。
理央の勤める会社は服飾系で、生産管理部に所属する理央は、冴子の指示に従って、入荷予定の生地の発注データを確認していた。
膨大な数字と型番をエクセルで照合しながら、端末のスクロールを繰り返す。
九時頃からこの部屋にいたが、夢中で打ち込んでいるうちに、壁にかかる時計の針は十時半を指していた。
「ふぃ〜。多分確認できたっ。結構集中できたんじゃね?」
イヤフォンを外すと、「佐藤くん」と呼ばれる。
「へっ」
右を振り向いた先。
そこには、いつからそこに立っていたのか、冴子が静かに見下ろしていた。
「朝から仕事熱心」
「す、すみません、イヤフォンしてて気づかなくて」
「いいの。朝イチ、やっぱりぼーっとしてたから」
冴子はわざわざ腰を落として、理央に視線を合わせる。
それどころか、わずかに下から覗き込むようだ。
甘い香りが鼻をかすめ、理央は肩をすくませる。
「仕事で、何かあるの? それとも持病があるとか? 上司としては、心配なんだけど」
「ん、ぅ……」
体ごと冴子の方に向けると、理央は口を尖らせる。
言いにくそうにする理央に、冴子は立ち上がり、「ドア、閉めるね」と言うと会議室とオフィスを繋ぐドアを閉めた。
ここを個人で閉めた場合、面談などで使用しており、しばらく入るなという合図だ。
冴子は理央に歩み寄り、理央が隣の椅子を引いて腰を落とした。
また、香水の香りが濃く、鼻腔を伝う。
「言いづらい?」
「仕事でもないし、持病でも、ない……ので」
「……じゃあ女」
言われて目を丸くする。
その挙動を見ても冴子は何も言わず、落ちてくる黒髪を耳にかけた。
ピアスが揺れ、目元のほくろが艶っぽく理央の目に映る。
「彼女とうまく行ってないとか?」
「い、いません、彼女なんか」
だから、室内に備え付けの会議室に、パソコンを持ち込んでいた。
この部屋は、会議がなければ自由に使ってよく、四つの長机で四角形が構成された角を陣取っていた。
入口を入って右手には移動式のホワイトボードが壁に沿って置いてあるくらいで、荷物などもあまり置かれていない。
ワイヤレスイヤフォンを耳につけ、外界の音を遮断しながら、仕事に集中しようとする。
理央の勤める会社は服飾系で、生産管理部に所属する理央は、冴子の指示に従って、入荷予定の生地の発注データを確認していた。
膨大な数字と型番をエクセルで照合しながら、端末のスクロールを繰り返す。
九時頃からこの部屋にいたが、夢中で打ち込んでいるうちに、壁にかかる時計の針は十時半を指していた。
「ふぃ〜。多分確認できたっ。結構集中できたんじゃね?」
イヤフォンを外すと、「佐藤くん」と呼ばれる。
「へっ」
右を振り向いた先。
そこには、いつからそこに立っていたのか、冴子が静かに見下ろしていた。
「朝から仕事熱心」
「す、すみません、イヤフォンしてて気づかなくて」
「いいの。朝イチ、やっぱりぼーっとしてたから」
冴子はわざわざ腰を落として、理央に視線を合わせる。
それどころか、わずかに下から覗き込むようだ。
甘い香りが鼻をかすめ、理央は肩をすくませる。
「仕事で、何かあるの? それとも持病があるとか? 上司としては、心配なんだけど」
「ん、ぅ……」
体ごと冴子の方に向けると、理央は口を尖らせる。
言いにくそうにする理央に、冴子は立ち上がり、「ドア、閉めるね」と言うと会議室とオフィスを繋ぐドアを閉めた。
ここを個人で閉めた場合、面談などで使用しており、しばらく入るなという合図だ。
冴子は理央に歩み寄り、理央が隣の椅子を引いて腰を落とした。
また、香水の香りが濃く、鼻腔を伝う。
「言いづらい?」
「仕事でもないし、持病でも、ない……ので」
「……じゃあ女」
言われて目を丸くする。
その挙動を見ても冴子は何も言わず、落ちてくる黒髪を耳にかけた。
ピアスが揺れ、目元のほくろが艶っぽく理央の目に映る。
「彼女とうまく行ってないとか?」
「い、いません、彼女なんか」

