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僕の愛する未亡人
第2章 はじめての社外業務①

……なのに、頭の片隅には、黒のストッキング越しに覗いた脚線や、側に漂う甘い香りが残っている。
理央は小さく首を振り、画面に視線を戻した。
*
「……御馳走様でした」
「いえ、今日はしんどそうだったでしょ」
オフィスに戻る廊下で改めて礼をする。
先ほどの休憩時間に、冴子は会議室以上のことを聞いてくることはなく、また、土曜日食事をする約束についても、特に触れなかった。
「午後は無理しないように」
まるで一緒に食事した雰囲気を出さないようにするかのように、冴子は凛とした空気で自席に戻る。
理央も自席に戻ると、昼食をとり終えた佳織がスマートフォンを人差し指でスクロールしているのが見えた。
佳織がこそっと理央に話しかける。
まだ休憩から帰ってきていない社員もおり、着席している社員はまばらだった。
「飯塚さんと休憩時間、何かあったの…?」
理央が会社の女性と食事をとらないことを知っているから、佳織はあえてそのような聞き方をしたのだろう。何か問題でもあったのかと心配してくれているようだった。
「あ…午前中も面談を会議室でしてもらってて。その続きみたいなもんです。明日から外回りも同行することになったので、それの注意事項とか」
「飯塚さんって優しいよね……すごい仕事できる人だし」
佳織が顎に手をつきながら視線を逸らした。その頷き方や視線の動きからは、佳織が年下の冴子を慕っているのが読み取れた。
*
明日、冴子に同行する外回りのことを考えると、今日中になるべく進めておきたい仕事があった。
イヤフォンを耳につけ、外界を遮断する。佳織の存在は当然気になるが、明日以降、冴子に迷惑をかけるわけにはいかなない。
いつの間にか定時の十七時半を過ぎていた。
午前中は入荷予定の生地の発注データを確認していたが、この時間は店舗ごとの在庫表を照らし合わせていた。
「……佐藤くん」
佳織の背後から低めの声が落ちる。
しかしイヤフォン越しの理央には届かず、画面を見つめ続けていた。
冴子のため息が佳織の耳に届く。佳織は冴子に会釈をして、左隣から肩を揺さぶる。
理央が振り向いたその先には、腕を組んで立つ冴子の姿があった。
「あ、す、すみませんっ」
「定時過ぎてる。午後は無理しないようにって言ったんだけどな」
冴子は笑みを浮かべて、在庫表が書いてある紙を取り上げる。
理央は小さく首を振り、画面に視線を戻した。
*
「……御馳走様でした」
「いえ、今日はしんどそうだったでしょ」
オフィスに戻る廊下で改めて礼をする。
先ほどの休憩時間に、冴子は会議室以上のことを聞いてくることはなく、また、土曜日食事をする約束についても、特に触れなかった。
「午後は無理しないように」
まるで一緒に食事した雰囲気を出さないようにするかのように、冴子は凛とした空気で自席に戻る。
理央も自席に戻ると、昼食をとり終えた佳織がスマートフォンを人差し指でスクロールしているのが見えた。
佳織がこそっと理央に話しかける。
まだ休憩から帰ってきていない社員もおり、着席している社員はまばらだった。
「飯塚さんと休憩時間、何かあったの…?」
理央が会社の女性と食事をとらないことを知っているから、佳織はあえてそのような聞き方をしたのだろう。何か問題でもあったのかと心配してくれているようだった。
「あ…午前中も面談を会議室でしてもらってて。その続きみたいなもんです。明日から外回りも同行することになったので、それの注意事項とか」
「飯塚さんって優しいよね……すごい仕事できる人だし」
佳織が顎に手をつきながら視線を逸らした。その頷き方や視線の動きからは、佳織が年下の冴子を慕っているのが読み取れた。
*
明日、冴子に同行する外回りのことを考えると、今日中になるべく進めておきたい仕事があった。
イヤフォンを耳につけ、外界を遮断する。佳織の存在は当然気になるが、明日以降、冴子に迷惑をかけるわけにはいかなない。
いつの間にか定時の十七時半を過ぎていた。
午前中は入荷予定の生地の発注データを確認していたが、この時間は店舗ごとの在庫表を照らし合わせていた。
「……佐藤くん」
佳織の背後から低めの声が落ちる。
しかしイヤフォン越しの理央には届かず、画面を見つめ続けていた。
冴子のため息が佳織の耳に届く。佳織は冴子に会釈をして、左隣から肩を揺さぶる。
理央が振り向いたその先には、腕を組んで立つ冴子の姿があった。
「あ、す、すみませんっ」
「定時過ぎてる。午後は無理しないようにって言ったんだけどな」
冴子は笑みを浮かべて、在庫表が書いてある紙を取り上げる。

