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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第15章 邪魔なんてさせないんだからッ!

 唯斗さんが姫実花さんを呼び止めるその後ろ姿が見えた――。
 ややあってふたりは仲良く並んで夜の薄闇の中へゆっくり消えていく……。


「どう、して?」
 あたしの手は唯斗さんに解かれたんだろう。

「どうして?」
 唯斗さんはあたしを何度も求めたの?

 明実の言うとおり、あたしはセフレで……。
 だから簡単に中出しもできたんだ……。

 そもそも、あたしは唯斗さんに――。

 好かれていなかった?

 そもそもあたしは、『可愛い』とは言われても、『好き』とは言われていない。
 告白されなかったのは、そもそもあたしに対して恋愛感情がなかったから――?

 唯斗さんがあたしを求めたのは姫実花さんを振り向かせるための口実だったの?
 じゃあ、嫉妬してくれたのは……自分の所有物を取られる感じ、だったのかな。

 真実を知ったあたしの身体は重力に耐えられるはずもなく、力を失ってずるずると崩れ落ちる。

「――っつ」
 あの世界は子供のあたしじゃ到底追い着けやしない。
 唯斗と仲良く話している姿に自分が入る余地なんてないことを思い知る。

 もしかして、あたしはとんでもない思い違いをしていたんじゃないだろうか。

 唯斗さんの本命はあたしじゃなくて――。
 あたしを抱いたのは欲求不満で――。
 ただ姫実花さんを大切にしたかったから、簡単に抱けるあたしに手を出したのかもしれない。

 あたしが唯斗さんを好きなことを知っていて、だから抱いたのかもしれない。
 合意の元だって判って――……。


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