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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第16章 さようならを貴方に~誰かあたしを拾って愛して。

 みんな、あたしが存在したことなんて、きっとすぐに忘れる。
 ううん、姿が見えなくなって清々するかもしれない。

「あたし……必要じゃ……ないんだ……」
 自分で言って余計に辛くなる。

 胸が苦しい。
 頭も痛い。
 何処に行こう。
 何処に行けばいい?

 あたしは、どうやって生きていけばいいんだろう……。


 ――……。
 ――――……。

 しばらく歩いていると、薄暗い公園にやって来た。
 その公園は、外灯はブランコくらいしか照らしてなくて、しかも外灯はチカチカしていて今にも切れそうだ。
 鬱蒼と茂った木々に囲まれていて、ちょっと寂しい場所。
 細い道路は滅多に車なんて通りそうになかった。

 もう、ダメ。
 悲しすぎて歩けない。
 身体が鉛みたいにすごく重たい。

 足、もう動かせない。

 あたしはブランコに座り、俯いて涙を流す。
「っひ、ふぇ……っく……」

 唯斗さん……。
 あたしはただ、貴方の傍にいたかった。
 一番になりたかった……。

 だけど、あたしにはそんな願いを抱くことすら許されなかったんだね……。



「君、今時分に、どうしてここで泣いているんだい?」
 ひとり、嗚咽を漏らして泣いていると、上から鼻にかかった声が聞こえた。

 だれ――?

 顔を上げても、ダメだ。
 涙で何も見えない。

 乱暴に目を擦って見上げた。


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