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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第16章 さようならを貴方に~誰かあたしを拾って愛して。
いつまでこうして泣いていても仕方がない。
どんなに泣いても手に入らないものは入らないのだから――。
たくさん泣いて、ようやくあたしは重たい腰を上げた。
失恋の苦しみでスカートを穿く行為も、ブラをつける余裕もない。
身体が重くて仕方がない。
着ている衣服はそのままに、キャリーケースを引き摺って玄関を抜けた。
ガチャリと重たい音を立ててドアが閉まる。
その音は、まるであたしの心を表しているかのようだ。
深い絶望があたしを襲う。
だけどドアはオートロックで良かった。
これなら泥棒にも入られない。
あたしがこうして出て行っても誰にも迷惑はかからないから――……。
唯斗さんの家を出たのはいいけれど、どこに行けばいいだろうか。
あたし、このまま家に戻ってもいいのかな……。
お父さんも、あたしがいない方が安心するんじゃないかな……。
幸い、お父さんは海外だ。
唯斗さんから連絡がない限り、あたしが家を出たことも知られないだろう。
携帯は唯斗さんの家に置いてきた。
万が一、GPSで知られるっていうこともあるから。
あの時は探してくれて良かったと思ったけれど、今は違う。
きっとね、心優しい唯斗さんはあたしが居なくなったことに気がつけば心配すると思う。
だけどそれは僅か数日のこと。
姫実花さんと一緒に居れば、きっと忘れる。

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