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魅惑~甘く溺れる身体と心。
第4章 蜜に溺れる身体。

 しかも、唯斗さんはずっと不機嫌なまま――。

 あたし、これから約1ヶ月半をどうやって唯斗さんと過ごせばいいんだろう。

 あんなに楽しみにしていた唯斗さんとの生活が、僅か数分ですべて水の泡のように消え去ってしまう。

 最悪だ。

 泣きたくなってくる。
 だけどこれは自業自得。
 あたしがおかしな考えつかなければ、きっと今頃は唯斗さんと笑い会えていただろう。
 目頭が熱い。
 胸が詰まる。
 あたしは泣かないよう、必死に滲む視界を抑え込む。

 虚しい電子音を立てたドアは、まるであたしの心を表しているようだ。
 唯斗さんに引っ張られるまま家の中に入れられた。

 ドアが閉まり、オートロックがかかる。
 ――それと同時だった。
 ドアを背にしたあたしのすぐ真横に唯斗さんの拳が勢いよく玄関のドアを叩いた。

「兄さんに許可貰ってGPS機能を使って正解だった。迎えに行くっていっただろう? どうして連絡を寄越さなかったんだ?」
「ごめ、なさい」
 こんな唯斗さん、知らない。
 すごく怒っていて怖かった。
 だから顔なんて当然見ることができなくて、あたしは顔を俯けたまま、肩を縮めて謝ることしかできなかった。
 その声は近くにいる唯斗さんにも聞こえないんじゃないかっていうくらい小さかった。
 泣かないよう、必死に溜め込んでいた涙が溢れてくる。


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