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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第9章 なつめと大根。
「いたた……いたた」
どうしよう!
こんなんじゃ、唯斗さんもお母さんみたいにあたしから背を向けて行ってしまう。
「も、やだ……やだよ……」
視界が涙で歪む。
何をやっても裏目に出る自分が、たまらなく惨め。
唯斗さんに迷惑をかけてしまう。
役立たずだって思われたくない。
どうしよう。
このまま、さようならって言われたら……。
子供の面倒を見るのに疲れたって言われたら……。
「っひ……っふぇ……」
悲しくなってひとり、しゃくりを上げて泣く。
まだ子供の自分は何もできないと現実を突きつけられる。
そうこうしていたら、唯斗さんがパジャマ姿のまま、慌てた様子でキッチンにやって来た。
「澪ちゃん!? 何かあった?」
朝が苦手なさすがの唯斗さんでも起きるくらい、あたしはやらかしてしまったんだ。
「ごめ、なさい……散らかしちゃって……」
泣いていたところを見られまいとぐいっと乱暴に目尻を擦る。
にっこり笑ってみせるけれど、どうやら失敗したみたい。
「どうしたの? 具合悪い?」
唯斗さんは真剣な顔で蹲っているあたしの視線に合わせてしゃがみ込んだ。
「あ、えと……生理痛がひどくて……ごめんなさい。床、散らかした……」
これで決定。
あたしは世界一役立たずな奴。
「片付けます!」
急いで立ち上がろうとすると、唯斗さんは手で制した。

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