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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第9章 なつめと大根。

 ――なんて、見惚れていると、唯斗さんはキッチンからにっこり微笑みかけてくれた。

 小さなミルク用の鍋を棚から取ると、袋の中から何かを取り出している。

「いたた……」
 ぐるぐる鳴っているお腹を抑えながら、起きているのも辛くなって、とうとう横になった。
 お腹を擦りながらソファーの上で身悶えする。

「澪ちゃん、できたよ。起き上がれる?」
「……はい」
 スープ鍋を片手に、唯斗さんが目の前にやって来た。
 鍋敷きの上にお鍋を置くと、あたしの背中を支えながらゆっくり起こしてくれた。

「急がなくていいから食べて。きっと楽になるから」
 そう言われて出されたのは、大根と……。
 デーツみたいな赤茶色の形をした小さな実が入ったスープ。

「えっと……?」
 これって何だろう?
 差し出されたカップに入ったスープと唯斗さんを交互に見るあたしは、不安そうだったのかもしれない。
 唯斗さんはあたしの隣に腰掛けた。
「熱いからゆっくり食べて」
「あたし、食欲が……」
 実際、ご飯を食べられるほどの元気は今のあたしにはなかった。
 せっかく作ってくれたんだけど、吐き出してしまったら申し訳ない。
 あたしは首を横に振った。

 んだけど……言ったとたん。
 あたしの身体がまたもやふんわり浮いた。
「ひゃあっ!」
 そうかと思えば、あたしは唯斗さんの膝の上に乗せられてます。


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