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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第9章 なつめと大根。

「ゆ、ゆいとさんっ!」
「折角作ったんだ。少しでもいいから食べてみて? ね?」
 顔、近い!!
 そりゃ、キスもたくさんしたし、それ以上のことももうしているけれど、でもそれとこれとはまた別の話で――。

「あの、あのあのっ!」
 心臓が爆発するんじゃないかっていうくらい、ものすごい速さで鼓動している。
「いいから、はい。あ~ん」
「あ、あの。下ろして……」
「そう言わない。ちゃんと食べられたら、ね。はい、口開けて? あ~ん」
 こういう時の唯斗さんってば結構強情。
 普段はとても優しいのに、譲らない時は譲らないんだ。
 あたしは恥ずかしい気持ちをそのままに、口を開けた。

「えっ、あ、あ~ん?」
 むぐ。
 口の中に放り込まれた大根はとても甘い。
 お砂糖漬け、までとはいかなくても、とっても甘かった。

「どうかな?」
「えっと……美味しい……です」
「じゃあ、これも」
 むぐ。
 続いて赤茶色の実も口の中に放り込まれた。
 噛めば噛むほど、
 なんだろう、水分はないのに不思議。
 味は林檎に似てる?

「甘い……美味しい……」
 食欲は全くないはずなのに、このスープはあっさりしていて食べやすい。
 それに、おやつみたいに甘い。

「良かった。なつめって言ってね、大根ととても相性が良いんだ。身体の冷えを助けてくれる成分があるんだよ? 生理痛もきっと軽減できると思うんだ」

 唯斗さんは何でも知っている。
 きっとお父さんの影響からなのかな?


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