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すぅぃーと・すくーる・らいふ
第1章 卒業式

底冷えのする三月半ば。卒業式のあった体育館は寒くて全身が冷えてしまった。
同級生たちが下校したあと、私は教室の自席に着いた。
黒板に卒業式と書かれ、チョークで寄せ書きがされている。後ろのボードにはティッシュで作られた花が飾ってあった。
平屋の木造校舎。来年には取り壊される予定だ。
天井から吊り下がる長い蛍光灯。作り付けのロッカーに、板敷の床。
(この教室も見納めか……)
私は目を閉じて過去に想いを馳せた。
運動会、クラスマッチ、合唱コンクールetc……何もかもが懐かしい。
「卒業式では泣くと思ったけど……案外、涙って出ないものね」
クスッとした時、廊下で足音がした。続いて、建付けの悪い板戸がガタガタと開けられた。
「雪。下校してなかったのか」
幼なじみの宮一樹だった。
十五歳とは思えないほど大人びた顔立ち。胸ポケットにカーネーションがささったままである。
「一樹くんこそ……校舎に残っていたの?」
顔を上げた私は一樹の琥珀色の瞳とであって、やや俯いた。
赤ちゃんの頃からの付き合いなのに、まともに顔を見られない。胸がドキドキして、乳白色の頬が薄ピンクになった。
「卒業生が校門を出るまで見届けてきたんだよ。生徒会長として最後の仕事だからな」
喧騒の消えた校舎内。小鳥のさえずりがよく響いた。
「今後、この教室に来ることはないのね。なんだか、信じられないわ」
そうつぶやくと、一樹が私の栗色の髪に触れた。腰まで伸びた髪のやわらかさを確かめるように撫でる。
「いろんなことがあったな。この髪の毛、入学した時は肩くらいだったのにな」
交わる私と一樹の視線。繋ぎあった手と手。互いに互いを求めてやまない。
(一樹くん……)
そっと目を閉じると、一樹の唇が私のそれに触れた。最初は優しく、徐々に激しく。
一樹と付き合うようになってから、一年弱。
啄むようなキスに始まって、今は舌を絡め合う深いキスをするようになった。
学び舎で口付けを交わす背徳感。
「雪……」
やがて唇が離れ、私は一樹の胸に頬を埋めた。一樹が私の肩を引き寄せる。
私たちはしばらくそのままじっとしていた。
「帰ろうか」
同級生たちが下校したあと、私は教室の自席に着いた。
黒板に卒業式と書かれ、チョークで寄せ書きがされている。後ろのボードにはティッシュで作られた花が飾ってあった。
平屋の木造校舎。来年には取り壊される予定だ。
天井から吊り下がる長い蛍光灯。作り付けのロッカーに、板敷の床。
(この教室も見納めか……)
私は目を閉じて過去に想いを馳せた。
運動会、クラスマッチ、合唱コンクールetc……何もかもが懐かしい。
「卒業式では泣くと思ったけど……案外、涙って出ないものね」
クスッとした時、廊下で足音がした。続いて、建付けの悪い板戸がガタガタと開けられた。
「雪。下校してなかったのか」
幼なじみの宮一樹だった。
十五歳とは思えないほど大人びた顔立ち。胸ポケットにカーネーションがささったままである。
「一樹くんこそ……校舎に残っていたの?」
顔を上げた私は一樹の琥珀色の瞳とであって、やや俯いた。
赤ちゃんの頃からの付き合いなのに、まともに顔を見られない。胸がドキドキして、乳白色の頬が薄ピンクになった。
「卒業生が校門を出るまで見届けてきたんだよ。生徒会長として最後の仕事だからな」
喧騒の消えた校舎内。小鳥のさえずりがよく響いた。
「今後、この教室に来ることはないのね。なんだか、信じられないわ」
そうつぶやくと、一樹が私の栗色の髪に触れた。腰まで伸びた髪のやわらかさを確かめるように撫でる。
「いろんなことがあったな。この髪の毛、入学した時は肩くらいだったのにな」
交わる私と一樹の視線。繋ぎあった手と手。互いに互いを求めてやまない。
(一樹くん……)
そっと目を閉じると、一樹の唇が私のそれに触れた。最初は優しく、徐々に激しく。
一樹と付き合うようになってから、一年弱。
啄むようなキスに始まって、今は舌を絡め合う深いキスをするようになった。
学び舎で口付けを交わす背徳感。
「雪……」
やがて唇が離れ、私は一樹の胸に頬を埋めた。一樹が私の肩を引き寄せる。
私たちはしばらくそのままじっとしていた。
「帰ろうか」

