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すぅぃーと・すくーる・らいふ
第1章 卒業式
午後の空を薄い雲が浮かんでいる。
春の陽射しを浴びてせせらぎがキラキラと光る。アスファルトで舗装された道はポカポカと暖かい。
「送ってくれてありがとう」
数寄屋門の前で、私は一樹に言った。表札に「大川」。両側を築地塀が伸びている。
「といっても、俺ん家そこだけどな」
一樹は肩を竦めて苦笑した。
細葉の生け垣に囲まれた平屋。小径を挟んで大川邸と隣り合わせだ。
「じゃあな」
手を軽くあげて、一樹は家に入っていく。
「ええ、またね」
軽やかに玄関の引き戸を開けた途端、私は思わず足を止めた。
土を固めた土間に揃えられたローファー。綺麗に磨き抜かれたこの制靴は……
(詩織ちゃんのもの。来てるの?)
香山詩織は一樹同様、私の幼なじみだ。優等生で優しくて、女子の中では最も私と仲がいい。
「先に下校したと思ったら……」
箱階段をのぼって右に折れてすぐが私の私室だ。当然、そこにいると思ったのに。
「信さま……」
その声は二十歳の兄・信の寝室からした。間違いない、詩織だ。
ドアが半ば開いていた。嫌でも、中の様子が目に入ってしまう。
ベッドに腰掛けて、兄と詩織が抱きしめあっていた。
グレーの壁にモスグリーンのカーペット。作り付けの棚しかない無機質な兄の寝室。
真っ白なセーラー服にチェックのプリーツスカート。黒髪を肩で揃えた詩織は場所にそぐわない可憐さだった。
兄の腕のなかでなんて幸せそうな表情をしてるのだろう?
「雪、戻ったのか?」
詩織を抱きとめたまま、兄が顔を上げた。
怜悧な眼差し。我が兄ながら整った目鼻立ち。
「改めて、卒業おめでとう。今日のお前は綺麗だったな」
「ありがとう……お兄さん」
戸惑いながらも、私は礼を述べた。卒業式には母とともに参列してくれたのだ。
「……これはどういうことですか?」
そういった時、詩織はこちらを振り返った。
博多人形のような端麗な面差し。詩織は薄紅色の唇を片側だけ上げた。
「信さまと交際することにしたの」
「え……何?お兄さんと詩織ちゃんが?」
私はまつ毛をしばたたいて、フリーズした。
詩織が兄に憧れてるのは知っている。だが、詩織は幼なじみの藤沢俊治とも仲がいい。
卒業前に俊治から告白されていたはずだった。
「俊治くんのことはどうするつもり?」
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