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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

 彼の名は椎名 丞(しいな たすく)。宝よりも二歳年上の彼は二十七歳にして社長からも期待されている人物だ。

 もちろん、丞は宝と同性。
 宝は今まで、自分にそういう性癖があることを知らなかった。

 子供の頃から好奇心が旺盛で、機械をたくさんいじっていた。だから思春期を過ぎても恋愛にはまるで興味がなく、機械が恋人のようなものだった。

 とはいえ宝の性格は穏やかで、友人は多い。
 パソコンをよく触るおかげで海外にだってチャット友達がいる。けれども誰かに恋をするという経験はなく、丞と出会うまではそういう感情自体、自分にはないと思っていた。

 それなのに、宝は丞に恋心を抱いている。それも同性にーー。

 それは初めてだった。丞の姿をひと目見た時、背筋がぞくぞくして、胸が大きく高鳴り、身体が熱くなったのを今でも覚えている。

 きっかけは入社式。歓迎の挨拶の時だ。

 襟足よりも短い黒髪に長い足。広い肩幅。それでいて筋肉質ではなく、だからといって細身でもない。健康的で凛々しい彼はスーツ姿がとてもよく似合う。高い鼻梁に男らしい薄い唇。涼しげな眼目元をした綺麗な丞に一目惚れをした。

 その彼と同じチームになれて嬉しくて、その日は眠れなかったのを今でも覚えている。

 だが、この恋は当然、丞に打ち明けることができず、宝は二年間、この想いを秘めて過ごしている。そんな中、会社から言い渡された突然の出張。

 丞が親会社から離れてしまうことを知った宝は慌てて立候補をしたというわけだ。

 けれども宝は丞によく思われていない。それというのも、宝が話しかけた時は、必ずと言っていいほど仏頂面で不機嫌だからだ。

 それに、自慢ではないが宝の腕はそこいらの新人よりもずっと上だ。下手をすれば、中堅くらいまで匹敵する技能を持っている。それなのに、丞は宝をプロジェクトチームに指名しなかった。

 焦った宝は自ら挙手をし、宝の技能を知っている上司はだからこそ、このプロジェクトに参加を許可してくれた。

 丞は宝と一緒に仕事をしたくないと思っているに違いない。
 それでも側にいたいと願ってしまうのはいけないことなのだろうか。

 好きな人に嫌われていると思えば、胸が苦しくなるし涙だって出そうだ。しかし、丞と二度と会えないだろうことを考えれば、こうして同じチームとして隣にいたいと願うのだ。


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