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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

 彼女は細身でありながら、女性らしい膨らみもあり、着ている真っ赤なスーツがよく似合う。きりっとした目鼻立ちに長い睫毛。世の中の男性は彼女を放って置かないだろうほどの美女だ。

 彼女は手にしている手鏡で肌をチェックしている。

 彼女は、『肌が荒れている』と言ってはいるが、宝から見ればとても綺麗な肌をしていると思う。こんな山奥でも、都会に住んでいた頃と同じような立ち振る舞いをしている。

 彼女は何処であろうがけっして手を抜いていない。だからその言葉はひとえに、自分を:庇(かば)っての発言に違いないだろう。


「お前のはただの加齢が原因じゃないのか?」
 丞の腕が宝から外れる。

 彼の視界にはすでに宝は写っておらず、面倒くさそうに阿佐見を見た。

「なんですって?」

 丞は阿佐見が美人であるにもかかわらず、けれども彼にとってはそれはどうでも良いことなのか、毒づく。二人のこのやり取りは、本社にいた頃からずっとこんな調子だ。


 日常的であはるものの、目の前で喧嘩が勃発しそうになるのはやはり気が気ではない。況(ま)してや自分のことがきっかけで言い合いになるのだ。宝には耐えられない。


「ごめんなさい。俺が悪いんです」
 宝は二人の間に立ち、なんとかこの険悪な雰囲気を変えようと必死に謝罪する。

「もう、宝ちゃんってばほんっと真面目くんよね。誰かさんとは違って……」

 そう言って、ちらりとオフィスの方を見た泪の視界の先からやって来たのは、丞や阿佐見と同じく同期の斎 智也(いつき ともや)だ。彼は襟足までの金髪は染めているのだろう。

 背も高く、顔だって整っていて、性格だって明るく、人懐っこい。社内では女性の人気はほぼ斎と丞に二分されている。:--にもかかわらず、真意はどうかは判(わか)らないが、彼には決まった相手がいないらしい噂をよく耳にする。彼の唯一の弱点は口が軽いということだ。


「ええっ? 俺の事?」

「アンタの他に誰がいるって言うのよ。アンタがここに立候補したのって、どうせ宝ちゃんがいるからここにいるんでしょう?」

「あらら、バレた? っていうことだから、枇々木くん、今日の夕飯一緒にどう? 俺お手製のご飯をご馳走するよ」

「えっ?」

 阿佐見に指摘され、どうやら開き直ったらしい斎は、宝の手を握った。


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