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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

 (四)



 翌日の平日も、宝はいつものように勤務先へと向かった。
 しかし、その日はいつもとは違った。
 それというのも、丞の顔色がどうも優れないのだ。

 宝が出勤したての早朝は、どこか様子がおかしいと思いながらも、もしかすると自分の思い過ごしかもしれないと否定し、作業に取りかかっていたのだが、時間が経つにつれ、丞の表情に変化が現れはじめた。

 なにせ彼は仕事の用件以外、殆ど話さない無口な人柄だ。思ったことがすぐ顔に出る宝とは違い、彼は普段、何を考え、何を思っているのかもわからない。

 それでも丞の異変に気がついたのは、出社してから三時間が過ぎた正午前だ。

 夏は終わりを告げ、秋へと移り変わっているこの季節。まだ日中は暑いものの、けれどもそこまでの蒸し暑さはなく、況してやここは山奥で、コンクリートに覆われている都会よりも気温が下がっている。それでも彼は玉のような汗を額に浮かべ、常に引き結ばれている薄い唇の色は青い。


「あの、大丈夫ですか? 顔色があまり優れないようですが……」

 見るに堪えかねた宝はパソコンとにらみ合っている丞に訊ねた。


「問題ない」

 しかし、彼の宝に対する無愛想は相変わらず健在だ。眉根を寄せ、心配そうに訊ねる宝をほんの少し横目に入れただけでたったひと言そう告げたきり、もう何も話そうとはしない。骨張った長い指がひたすらキーボードを打ち続ける。

「でも、あのっ!」

 それでも丞の体調を気にする宝は、かまわず今日は仕事を休むようお願いしようと口を開く。


「体調管理も仕事のひとつ、なんでしょう? リーダー?」

 体調が悪いのに仕事を続ける丞と、挙動不審な宝に見かねたのか、横から口を出したのは阿佐見だ。

 それは先日、宝に言った丞の言葉だ。
 阿佐見は丞に無理をしないようにと諭(さと)す。
 自分が言った言葉に、流石の丞もぐうの音が出ないのか、指先がキーボードから離れた。


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