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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

 (五)



 斯(か)くして、仕事が終わったその足で丞の家に寄ることにした宝はひとり、すっかり暗くなった夜の中を歩いていた。


 時刻は午後七時過ぎ。ほんの数分までは綺麗な満天の星空が見えていたと思ったのに、山の天気は変わりやすい。頭上に広がる藍色の空は薄い雲に覆われ、ぽつり、ぽつりと小雨が降り出している。


 丞の家は宝同様。やはりオフィスからそこまで離れてはいない。ただ宝の家と違うのは、道路沿いではなく、斜面を降りた小川の近くで、木々ばかりが目立つ場所だった。

 街灯のひとつもないここは、まるで人目をはばかるようなその位置にあるのように思える。

 降り出した小雨が、枝枝の葉に触れる。

 寂寂(じゃくじゃく)とした、うら寂しげなその奥から聞こえるのは、雨音とどこからか聞こえてくる獣の遠吠えのみだ。


 都会の喧噪にはないその静けさが、宝の恐怖心を煽(あお)ってくる。

 果たして丞は本当に、緑が鬱蒼(うっそう)と生い茂る森の中に住んでいるのだろうか。

 宝は阿佐見からもらった地図を頼りに、道無き道を懐中電灯で照らして進んでいく。

 するといくらかしない内に視界が開けていく。

 ややあって一軒の大きな屋敷が見えてきた。

 そこが丞の家だ。

 やはりこの家も昔から存在するのだろう。外観はどこか年代を思わせる。

 丞の家は宝が住まわせてもらっている家と同じく一戸建てには変わりないが、古民家というよりは屋敷のように見える。

 古びた外観は蔦(つた)で覆われていて、バルコニーがある二階まで浸食している。

 この屋敷もまた、丞の外見と同じで、どこか他者を寄せ付けない雰囲気があった。



 ただでさえ近くに小川があるおかげで、足場の土は少々水気を含んでいるというのに、降り出した小雨で足場がぬかるんでいる。

 途切れた雲の間から見え隠れするのは満ちた月だ。今日の月はどこか青みを帯びている。ここへ来てから夜毎見続けている夢に見る狼の瞳のようだと、宝は思った。


 ぬかるみに足を取られながらもいくらか進んで行くと、手入れされている様子がない広い庭と針葉樹を隔てた開き門扉が宝の前に立ち塞がった。

 門付近にはインターホンが見当たらない。


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