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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

 このような人目を避けた場所に家を構えているからなのか、不用心にも錠さえも見当たらず、宝が扉を押してみると、きいきいと軋んだ音を立てながら抵抗なく開いていく……。



「えっと、失礼します」
 誰に言うでもなく、ぽつりとそう告げて、まるで森の延長線上にあるような広い庭を横切る。

 もう少し先へ進むとようやく現れたのは両手開きの玄関ドアだ。ノックをしても返事はない。


 もしや屋内で丞が倒れているのかもしれない、

 宝が慌ててドアノブを回せば、門同様、やはり軋んだ音を奏でて開いた。

 屋敷の中は薄暗い。しかも外観から見る以上にとても広く感じた。玄関を抜け、長い廊下を歩く間にも、いくつもの部屋が存在する。

「椎名さんいますか?」

 声を張り上げ、丞を探すも、未だに返事はない。


 果たして丞の体調はまだ悪いのだろうか。

 おそらく寝室は二階だろう。不安な気持ちを抱え階段を上る。すると微かだが誰かの呻り声が聞こえてきた。

 その声は低い。男のものだ。


 苦しそうなこの声は果たして丞だろうか。

 病院もないこんな山奥では、救急車を呼んでもすぐに来てくれる保証はない。
 宝は声のする方へと急いだ。


「椎名さんいますか? 大丈夫ですか?」

 階段を上りきり、二つ並んでいる座敷の向かって右側。唸り声はどうやらこの部屋から聞こえてくるようだ。

 部屋に入る前にノックして、丞がいるのを確かめる。


「帰れ」
 やはり苦しそうなこの声は丞のものだったらしい。彼が中からそう話した。

 いくら目障りであっても、大好きな丞が苦しそうにしている。

 彼が元気でさえいてくれるのならどんなに邪険にされてもいい。好きな人に嫌われるのはとても悲しいけれど、不毛な恋をしているのには違いない。だから仕方のないことだ。

(でも今はーー)
「開けますよ?」

 宝は構わずドアを開けた。

 そこは洋間で、一〇帖にもなるだろう室内には電気が点いておらず、代わりにナイトテーブルに置いてある蝋燭には炎が灯っていた。

 丞がいるであろうナイトテーブルの隣に配置されているベッドは、けれども空っぽだ。
 バルコニーへと続く窓は開いていて、そこから侵入する風が淡い蝋燭の炎を揺らす。

 それでも室内は薄暗い。蝋燭の炎では灯しきれない。
 部屋の奥は闇に包まれていた。


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