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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ
彼はいったいどこにいるのだろうか。
宝が電気を点けようと壁に手を伸ばしたその時だ。
「点けるな!!」
丞は声を張り上げ、宝を制した。
「椎名さん?」
目を凝らし、視界を巡らせると、見えたのは蝋燭の炎を避けるようにして部屋の隅で蹲(うずくま)っている人影だ。
「椎名さんですか? 椎名さん大丈夫ですか?」
宝は慌てて丞に駆け寄ると、しかし彼は差し伸べた宝の腕を弾いた。
「俺に構わず帰れ!!」
「そんなに苦しそうにしているのに帰れません!!」
なぜ、彼はこういう時にすらも自分を邪険に扱うのだろうか。それほどまでに自分は嫌われているのか。
そう思えば思うほど、宝の胸が痛み、苦しむ。
そうこうしている間にも、丞の息が少しずつ上がってきている。それに触れた彼の身体は熱かった。
ひょっとして熱があるのではないか。
宝は悲しみに打ちひしがれる自分の感情を押しやり、丞を側にあるベッドへと寝かせようとふたたび手を伸ばす。
すると丞の様子がどうもおかしいことに気がついた。
丸まっていた脊椎(せきつい)がゆっくりと反れていったかと思うと、上下に揺れはじめる。
それに丞の苦しげな低い声が獣のそれへと変わっていくようではないか……。
「椎名さん?」
(これって……)
彼の身に、いったい何が起こっているというのか。
恐怖心が宝の心を徐々に覆っていく。
その時だ。窓から侵入した風が蝋燭の炎を掻き消した。
室内に闇が現れる。
そうかと思ったら、雷鳴が大地を揺らし、稲光によって夜の景色が浮かび上がった。
そして次の瞬間、宝は息を飲んだ。
丞が蹲っていたであろうそこには、大きな黒い塊が見える。
どうやらその塊は生きているらしい。それはゆっくりと起き上がると、宝と対峙した。
ぐるぐると腹の底から獣の呻り声を発している。
轟々(ごうごう)たる雷鳴と共に二度目の稲光が室内を照らす。
そこで見えたのは、椎名 丞という人物ではなくーー。
大の大人ほどもある、一匹のーー。
大きな狼だった。

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