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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ

(そんなの嫌だ!!)


 先ほど彼に殺されそうになった事も忘れ、宝は急ぎ階段を駆け下り、丞の屋敷を出ると後を追った。

 先を急ぐ宝の足は、今もなお振り続けている小雨のおかげでぬかるみに捕らわれる。
 足下には彼が流したものだろう、赤黒い血液が散っている。

「椎名さん! 椎名さん、どこにいるの?」


 息を乱し、不安定な足場で何度も転びそうになりながら、それでも大地に滴り落ちている血液を追って先を進めば、やがて視界が開けた。

 天井を張り巡らすように存在した木々の枝枝はそこになく、ぽっかりと空いた藍色の空から満月が見える。


 ここは動物たちの水飲み場だろうか、湖が広がっていた。
 月光が水面を照らす。

 幻想的なこの光景は、今のこの状況でなければうっとりと眺めていたいところだが今はそれどころではない。丞の一大事なのだ。

 宝は目を細め、深手を負った狼を探す。すると一際目立った大きな樹木:--そこに、傷を負った一際大きな銀色の狼が横たわるようにして倒れているのを発見した。


「椎名さん、椎名さん!!」

 彼が受けた傷は宝が想像していたよりもずっと深い。

 右の前足からはだくだくと血液が流れていた。

 肺は萎んだり膨らんだりを繰り返し、開きっぱなしの口からは苦しそうな声が放たれる。

 
「ああ、どうしようっ」

 このまま放って置いては彼が死んでしまうかもしれない。宝は首元のネクタイを外し、傷ついた前足を縛った。


 仮に、このまま血が止まったとしても助かるという保証はない。
 血を流しすぎているのかもしれない。それには輸血が必要だ。
 しかし彼は人間であり、同時に狼でもある。いったい誰に診てもらえばいいのだろう。
 それに、ここは山奥で助けを呼んだとしてもすぐに来てくれるかどうかもわからない。


『帰れ!』

 丞の言うとおり、そのまま帰っていれば、自分は彼に襲われずにすんだし、銃に撃たれなかったかもしれない。


「……っつ」

 宝はやるせなさに唇を噛んだ。
 自分がここまで考えなしで、浅はかな人間だとは思いもしなかった。

「俺の所為だ。椎名さんごめんなさい、ごめんなさい……」


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