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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ
宝の視界が揺れる。やがて涙袋から溢れた涙が頬を伝い、横たわる彼の口元に落ちる。
宝は傷ついた狼の前で項垂れ、自己嫌悪に陥っていると、彼の耳元で何かが動く気配を感じた。
振り向けば、そこには丞よりも一回りほど小さな、銀の毛を持つ狼が二匹佇んでいた。
ひょっとして彼の仲間だろうか。
宝は新たに現れた狼を見つめていると、やがてそれは人型へと変化していく……。
彼らが人型へと姿を変えたその瞬間、宝は目を疑った。
だってそこには見知った人物がいたからだ。
ひとりは腰まである波打つ髪に、赤いスーツを身に纏い、ピンヒールを履いたーー阿佐見 泪と、そしてもうひとりは金髪で長身の男ーー斎 智也が立っていた。
「彼なら平気よ。ウェアウルフは人間よりもずっと治癒能力が高いの」
阿佐見はゆっくりとした足取りでこちらにやって来ると、自己嫌悪に陥っている宝を宥めるようにして微笑んで見せた。
「まったく、こいつはまだ自分の力を制御できねぇのかよ。いったい何百年かかるんだか……」
「それだけ魔力が強いのよ、丞は……」
相変わらずの憎まれ口を叩く斎に首を振り、阿佐見が答える。
「えっと……」
自体を上手く飲み込めない宝は、もうどこから何を訊ねればいいのかわからない。
彼らを交互に見ていると、阿佐見が口を開いた。
「わたしと斎、それから丞はウェアウルフなの。わたしたちウェアウルフはひとつの群れとして行動を共にして生きているのよ。満月の今日はわたしたちの魔力が一気に高まる時でね、彼が体調を崩したのも、不用意に変身したのもその所為なのよ」
「信じられないだろう?」
肩をすくめ、宝の感情を代弁するかのように斎が阿佐見に続いた。
二度にもわたって狼が人間にーーあるいは人間から狼に変身する光景を見たのだ。もう信じるしかない。
「いえ……」
宝は小さく首を振った。
「やっぱりお利口さんね、宝ちゃんは……」
「それでどうするんだ? こいつは放って置いてもすぐ回復するぜ?」
未だ狼のまま倒れている丞を指差し、斎が訊ねる。
「でも。傷、とても痛そうだし……」
たとえ無事なのだとしても、自分の所為で傷ついた。それに本当に回復するのかも判らない。
このまま放って置けば、もしかすると彼は死んでしまうかもしれない可能性だってある。

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