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銀狼
第7章 還るべき地
二人がいるのは崖の頂上だった。
「桃色の森…──」
ピンク色の不思議な花をつけた木々が生い茂り、一風変わった雰囲気が漂っている。
あの夜、崖の下から見た時は…深い赤紫に見えた筈だが、昼と夜では様を変えるのだろうか。
花の強い香りが、森の空気を染めている。
けれど気分を害するような香りではなかった。
「変わった森ね」
「…此処からでは見えにくいか」
ここではまだ不十分らしく、彼は高くそびえる一本の樹木を見付けてその枝に乗り移った。
枝から枝へと上る銀狼のマントが風を受けて靡き、彼は樹木の先端に器用に留まる。
その場所からは遥か遠くまでをも見渡せる。
「──…!」
突き抜けた爽やかさが一陣の風となり、息を呑んだセレナの心を撃ち抜いた。