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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌



「──今…何と言った」



銀狼はその顔を彼女に近付ける。

セレナは目をそらした。



「…要するに…っ、不便なの、あなたに名前がないと。わたしばかり一方的に名前で呼ばれて…変な気分だわ」


「それは…どうにもしようがない事だ」



狼達は彼の意思に従い、その命令を実行する。

だが話しかけてはこない。

彼にはいなかった

名前で呼びあうような者など…。

セレナがその相手──?

そんな事も、頭をよぎりはしなかったのだ。



では何故──…彼はセレナの名を尋ねたのか。



それは支配する為だった。

彼女の全てを支配して、我が物にせんが為。



だが…他にも理由があったと思う。



彼女を " 名で " 呼びたいと、そんな欲求が果たして無かったと言えるだろうか──?




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