この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
殆ど同時に狼達の動きも止まった。
その異様な光景は、ただならぬ状況であることをセレナに突き付ける。
“ どうした…の… ”
彼女は止まったローの腕を掴んで、声には出さず目だけで訴えた。
しかし彼はスッとその視線をかわし、聖地の出口である洞窟を見つめる──。
「……音が聞こえた」
「音って、何の…?」
「お前達が好んで使う、火を吹く武器だ」
彼の尖った耳が動いていた。
周囲の草木の全てが此の瞬刻だけざわめき、闇を裂いた爆発音に動揺している。
「火を吹く武器、それ…っ、まさか銃のこと…!? 」
意味を理解したセレナは青ざめた。
対するローは変わらずの無の表情でただ…音のした方向を見据えていた。
彼女の問いに答えることなく
その方向へと足を向ける──。