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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
ローの身体が離れていく。
「──あっ…待って、行かないで!」
「……」
セレナは、彼の腕を持つ手に力をこめた。
この状況での銃声が意味するもの…
彼女にもわかっている。
その場にローが行けば何が起こるのかという事も…。
「…だ…だって…ッ、行ったらあなたは…!! 」
「──私が何をすると言うのだ」
「誤魔化さないでよ!」
声を張り上げたセレナ。
不意に冷たい、湿った風が吹き込み、辺りの草と一緒にローの銀髪を巻き上げる──。
セレナは彼を止めねばならない。
切迫した彼女のこの衝動は、もしかしたら、自分が人間である故の義務かもしれない。
…だが
「……離すがいい」
どうしても、どうしても…
ローの顔を見てしまえば、その衝動すら灰になる。
すがり付く彼女の手は
呆気なく振り払われた。