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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
───
ローは行ってしまった。
…セレナは止める事ができなかった。
脱力して立ち尽くす彼女の足の裏からは、岩の冷たさが直に伝わってきた。
“ 止めなくてはならなかった… ”
何としても、どんな手を使っても…彼を引き留めなくてはならなかったのに。
「ごめんな さい…っ 」
セレナが黙って見送る事しかできなかったのは、ローの無表情の背に…有無を言わせぬ怒りの色が含まれていたから。
その怒りの矛先は " 人間 " である自分にも等しく向けられているのだと知っているからだ──。