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銀狼
第9章 禁忌の果実を貪れ──
「目を閉じろ……。その暗闇の中で、私の化けの皮を剥がすが良い」
セレナは息を止めた。
鎖骨の間……喉の真下に、鋭くて冷たい物が当てがわれている。
「私の本来の姿を……其処へ焼き付けろ」
──牙だ。
其れは彼が人ではなく、異形の者であるシルシ。
牙は彼女の肌を突き破るような事はせず、ドレスの胸元を飾る白いボタンを噛みきった。
「…どうして…そんなことを言うの…っ…」
気付きたくなんてなかったし
目を背けていたかった。
それを知って敢えて、念を押してくるだなんて…やっぱりあなたは残酷すぎる。
暗闇の中に見えてしまう。
血に染まった自身の手を、無感情に見つめるあなたの瞳──。
「ならわたしはどうすればいいの…!? 」
「その様な心配は無用だ…セレナ…──」
張り詰めた糸をはじくのに似た音が聞こえる。
それは胸元のボタンが、彼の牙でひとつずつ飛ばされている音である。
「──お前に拒絶の権利は…与えていない」
そうやって露にされていく肌が、夜の外気に晒された。