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銀狼
第9章 禁忌の果実を貪れ──

その視線を横にやれば、半分が潰れた赤紫の妖しげな果実が湖の畔に転がっていた。

「──…セリュスの実…か」

崖の上から落ちてきたのか。


昼間は可愛らしい色でセレナを騙したその果実も、夜の訪れと共に隠しきれない魔力がその妖色に表れていた。

いや寧ろ──

危険な香りがさらに見た者を惹き付ける。



「……狂うには最高の美酒だ…」

「ふあ…ッ…!! 」


蜜壺に沈めていた指をゆっくりと引き抜き…

ローはセリュスの実に手を伸ばした。


実の潰れていないトコロへ
彼の鋭い牙が突き立てられる。


──つい先程まで、噛み裂いた人肉の血に満たされていた彼の口内

滝の冷水で浄められたのち、セレナの舌を絡め、受け入れた舌の上に

危険な果汁が染み渡る…。



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