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銀狼
第10章 討伐
崖の中腹にある彼の寝床にローは立っていた。
そこで彼は変わりゆく空模様を見つめる。
朝日が高度を増してゆけば、熱い日射しが地を照らした。
そして陽の日は空の頂上へ…。
「……」
数時間と、何もしない時が経過してゆく。
人が長いと感じるこの時は、彼にとっては流れる月日の中のただの一瞬でしかない。
「…今宵は満の月が浮かぶ夜か。皮肉な偶然もあるものだ」
いやこれすらも必然か。
切れ長の流し目が辺りを見渡す。
たとえ、彼に寄り添う森の風が鉄と火薬の臭いを届けたとしても…
その目に焦りは浮かばない。ただ──
数千年にもおよぶ歳月の
" 全て " を見てきた彼の瞳の
そのグレーの奥にはどこか憂いを秘めた光が射し込んでいた。