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銀狼
第10章 討伐
「…ロー…?」
寝床から出てきたセレナが彼の横にやって来た。
「何を見ているの…?」
「空と、滝と、…草花が見える」
狼はまだ其処にいない。彼等は夜がくるまで洞穴で眠っている。
「お前には起きてくるなと言った筈だが」
「だ……大丈夫よ。これ、くらい…」
足元のおぼつかないセレナ。
彼女の顔色は血の気が少ない。
言ったそばからふらついた彼女は、腕をローに掴まれて引き寄せられた。
「…っ…ハァ、ハァ」
「──…」
ローが掴んだ手首は、いっそう細くなっていた。
彼女の肩を抱けば痩せ細った事もすぐわかる。
…侯爵令嬢として屋敷で育ったセレナは、もともと身体が丈夫なわけではないのだ。
そんな彼女は雨に晒されたことで体調を崩し、それから数日、快方に向かう兆しもない。
仕方のないことではあった。
ローが街で調達してきたパンは既に無く、森から採れる木の実や果物だけで精気は付かない。
狼である彼等には火を扱う事もできず、生のままでは鹿の肉も食べられない。
疲れを癒すセリュスの実に頼るも…限界はある。
万能な薬などそもそも存在しないのだ。