この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
銀狼
第10章 討伐
飛び降りた場所は聖地の外へと続く洞窟の入り口。
着地したローは彼女を地上に立たせると、その背中を優しく押した。
「──…!」
暗闇の広がる洞窟に目をやり、セレナは不安を胸に振り返った。
スッ──
ローは彼女の胸で光る石を指し示す。
「これを、肌身離さず身に付けておけ。そうすれば……無事に森を抜ける事ができる」
「……」
「早く行け…──」
そしてセレナを安心させるように、震える彼女の頬を手の甲で数回、叩いた。
頬の体温を確かめるように…叩いた後の手を、触れたまま動かさない。
──行けと言っておきながら彼の手は動かない。
セレナはそこに自分の手を重ねた。
二人の指は自然に絡まり力がこもる…そして
ローが手を引き、互いの指は離れた。
「ロー…」
戻ってくるから
セレナの目がそう語る。
後ろへ向き直り…歩き出した彼女の後ろ姿は直ぐ様、洞窟の闇に呑み込まれた。